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Dr.タウチのMM通信


【第2回】『メタルマックス』は面白いのか?

ハンター諸君! 一週間のご無沙汰ぜよー!
まだまだ『MM4』を遊んでいますか? このゲームにはたくさんの要素を詰め込んでありますから、一度クリアしたくらいでは、遊び尽くしたとはいえないですよ!

今回は、驚きの一言からいってみましょう。それは……、

「『メタルマックス』って、ホントに面白いの?」

『メタルマックス3』 『メタルマックス2:リローデッド』 『メタルマックス4 月光のディーヴァ』

我ながらたまげたことを言ってしまった。いつもこのシリーズを応援してくれているハンター諸君なら、「そんなの愚問! 面白いに決まってるじゃないか!」とフォローしてくださるはず(だよね?)。でも……本当に「面白くない」のです。

わー! これは問題発言だ!(ドカドカドカー!! ←ミサイル着弾)


ミサイル乱射―っ!!!!!!!

このままでは誤解を招きそうなので、ちゃんと言い直しておきましょう。「最初から面白いわけではない」という意味なのです。このあたりのことを理解してもらうために、順を追って説明していきますね。

最初はもちろん、開発スタッフの誰もが“面白い”と思った企画書から制作がスタートします。そんなのは当たり前。で、その企画書を元にしてさらに面白くなるよう、ゲームのシステム、ストーリー、キャラクターデザインなどを練り上げて、仕様書にしていきます。


『メタルマックス4 月光のディーヴァ』企画資料より

これらの仕様書からプログラムを組んでいくわけですが、もちろんプログラマーだって、仕様書に書かれている以上の面白さを表現するために、さらなる工夫を凝らしていきます。

そうやってゲームは次第に形になっていき、やがて「α(アルファ)版」と呼ばれるバージョンが出来上がります。これはゲームとしての「メタルマックス第1号」とでもいえばよいでしょうか。制作陣が必死に考えたアイデアがプログラムされ、おぼろげに全体像が見えてくる状態のもの。この時点では全体はつながってはおらず、専用ツールを使って、部分部分を切り分けて見るような代物です。それからさらに「β(ベータ)版」という段階へ。ここまで来てやっとなんとか通しでプレイすることが出来るようになります。

『MM4』は『ドラクエ』や『モンハン』のような超大作とは違い、かなりの低予算で作っています。なので、どうしても開発期間は短くならざるを得ません。それでも「α版」に達するまでに1年以上、「β版」までには、そこからさらに数ヶ月の時間は必要でした。

これだけ苦労したんですから、さぞや面白いものに仕上がっているんだろう……と言いたいところですが、なんとこれが面白くないのです!(ドカドカドカー!!)

インターフェースの粗雑さにイラッとさせられたり、戦闘バランスが悪かったり、イベントはメッセージテキストが流れるだけだったり、しまいには突然「ピーーーーーッ」という異音と共にゲームが停止するバグが発生したりと、もうボロボロです。

あれほど必死に「面白くな~れ」と考えたアイデアも、その手触りやプレイ感がダメだと、遊ぶ人にはまったく伝わりません。しかし、現場の人間は「ここからが本番だ」ということを知っています。この、いまはボロボロの石ころが、実はダイヤの原石であることを知っているのです。

たとえばアイドルなんかでも同じことです。学校の中でズバ抜けて可愛い女の子がアイドルの研究生になったりするわけですが、芸能界に入ってみれば、同じレベルの子はいくらでもいる。それが専用の劇場で舞台経験を詰み、ダメ出しを食らい、観客の視線に晒されて、少しずつ鍛えられていく。そうして何度も何度も磨き上げられて、いつかは輝くスターになれるのです。

だから我々ゲーム開発者も、ボロボロの石ころを必死で磨きます。これが最高のダイヤになるまで!

この、ゲームを磨き上げる工程のことを、現場では「調整」と呼んでいます。たとえば「バランス調整」なんて言葉がありますね。これは、戦闘のバランスを調整する作業です。RPGでは非常に大切な要素です。ちょっと戦闘バランスが悪いだけで“クソゲー”のレッテルが貼られてしまうほどですからね。

では、戦闘バランスとはどういうものでしょう?

「戦闘のバランス」と言ってしまえば話はそこで終わりですが、戦闘を構成する要素は多々あります。モンスターの強さや、プレイヤーの強さ、武器の強さに、防具の強さ、各種の特技の強さもありますし、戦闘補助アイテムの効果なんかも関係してきます。これらはすべて、あるものを割り出すために用意されたパラメータです。

そのあるものとは……戦闘ダメージです。
モンスターに与えるダメージ。モンスターから受けるダメージ。バランス調整とは、おもにこのダメージの分量を最適なものに調整していく作業、と言ってもいいでしょう。戦闘バランスとは、ダメージのバランスのことなのです。

ではここで、『MM』シリーズがどうやってダメージのバランスを調整しているのか、お教えしましょう。まずはダメージの算出の仕方。簡単に書くと、以下のようになります。

 ダメージ=攻撃を受ける側の守備力-攻撃する側の攻撃力

実際にはもっと複雑な計算式を組むのですが、ここでは思いきり簡略化しています。そしてこの計算式を元に、モンスターのパラメータを調整します。

『MM4』モンスター図鑑 『MM4』兵器図鑑  『MM4』人間の強さ

実は『MM』では、最初にプレイヤーのパラメータや、武器、防具、戦車兵器のパラメータを設定したら、よほどのことがないかぎり修正はしません。これらを修正するなら、それは戦闘バランスの調整のためではなく、職業間のバランスや、武器や防具、兵器間でのバランスをとるためです。なぜなら、戦闘バランスの調整をする際に、モンスターのパラメータと、プレイヤーに関するパラメータの両方をいじってしまうと、どちらに問題があるのかがわかりづらくなってしまうからです。

たとえば、兵器XがモンスターAにダメージを与えすぎたので、兵器Xの攻撃力を下げたとしましょう。その後、兵器XではモンスターBにダメージを与えられないことが発覚します。そのときに兵器Xの攻撃力を上げてしまうと、最初のモンスターAとのバランスが壊れてしまいます。したがって、この場合は兵器Xの攻撃力を変えることはせずに、基準となる値にします。

モンスターAに問題がある場合は、モンスターAのパラメータを修正し、
モンスターBに問題がある場合は、モンスターBのパラメータを修正する。

このように、『MM』ではモンスターのパラメータを修正するやり方で、戦闘のバランスを調整しているのです。

では、次に基本的な調整の仕方をお教えしましょう(気前よくなんでも教えちゃうなあ)。

モンスターの強さのバランスは、モンスターの守備力で調整します。これがいちばん簡単な方法です。


守備力がめっそ高いメタルイーターには、ぜんぜんダメージを与えられません!

守備力が高いからダメージを受けない。
守備力が低いからダメージを多く受ける。
攻撃力の高い兵器ではダメージを与えられるが、攻撃力が低ければダメージを与えられない。

これらのダメージバランスを、延々とすべてのモンスターで調整していきます。この調整方法がわかりやすいのは、人間だけで戦う場所と、戦車でも戦える場所のモンスターの強さです。そう、『MM』シリーズには、人間用と戦車用と、2つのバランスがありますからね。

通常、人間と戦車でそれぞれの攻撃力を比較すると、戦車の方が圧倒的に攻撃力は高いです。なので、人間だけで戦うモンスターは守備力が低く、戦車で戦うモンスターは守備力が高く設定されています。

戦車に与えられるダメージ 人間に与えられるダメージ

実は、人間だけで戦うモンスターのバランスには注意しなければならない点があります。『MM』は、システム上、人間より戦車の「耐久力」が非常に高いのです。これは守備力の問題ではありません。戦車(SP=装甲タイル)へのダメージが5分の1に減少するという仕組みからくるものです。そのため、戦車では耐えられるモンスターの攻撃も、人間ではとても耐えきれず、あっという間にコゲコゲのバラバラで鰹のタタキにされてしまうのです!
そんなわけで、人間だけで戦うモンスターは、ほとんどの場合かなり攻撃力を低く設定しています。

 

ほかにも、こういったイレギュラーな調整はあります。植物系モンスターのパラメータなんかがそうですね。


植物系モンスターの調整はイレギュラーなんです。

ほとんどの植物系モンスターは、守備力や回避率が“0”に設定されています。これは植物らしい雰囲気を表現するためなのです。この設定があるおかげで植物系モンスターの強さは、守備力をいじって調整することが出来ません。かわりに、HPの量を増減して調整しているのです。序盤に登場する植物系モンスターよりも、後半の植物系モンスターは圧倒的にHPが多くなっています。

……さて、ここまで戦闘バランスの基本的な調整法を書いてきました。ところが、最新作の『MM4』では、この調整法を採用していないのです!(ドカドカドカドカドカー!!)


再びミサイルを乱射してみたっ!!!!!!

まあ、ズッコケないで聞いてください。『MM3』と『MM2R』では、この方法を用いてバランスを調整してきました。しかし、この方式できっちりバランスを調整すればするほど、ある問題が浮上してくるのです。

それは……「終盤になるほど機銃が使い物にならなくなる」ことです。

大砲のパラメータ 機銃のパラメータ S-Eのパラメータ

機銃の攻撃力は、最高でもせいぜい400~500程度。これは中盤の大砲やS-Eと同程度の攻撃力です。終盤に登場する大砲やS-Eの攻撃力は700以上になってきます。このあたりを基準にしてモンスターの強さを調整すると、必然的に機銃ではツラい戦闘になってしまうわけです。

『MM3』や『MM2R』のときには、様々な事情もあって、このへんのことには目をつぶってきました。しかし『MM4』では、これをよしとせず、その矛盾に挑戦しました。

モンスターの守備力だけで調整するのは困難です。そこで、植物系モンスターのようにHPの量で調整することを試みましたが、これにはまた別の問題が出てきました。低いレベルや弱い兵器でHPの高いモンスターと戦うと、戦闘が無駄に長引いてしまうということが多発したのです。

モンスターのHPの量は、適切な攻撃力の兵器で戦えば、適度な時間で終わるように設定してあります。しかし、モンスターの守備力が低い場合、こちらの攻撃力が弱くてもゴリ押しが効いてしまう。なのにHPの量だけはやたらとあるから、倒すまで非常に時間がかかってしまうのです。

フィールドの移動にあまり制限を持たせていない『MM4』では、この症状は致命的です。多くのユーザーがゴリ押しして先へ進もうとするでしょう。ゴリ押しすればするほど、めっそ長い戦闘を繰り返すことになってしまう。これは最悪のパターンです!


強敵・ぐんかんサウルスとの戦いは、ゴリ押しでは無理!?

『MM2R』まででは、モンスターの守備力を高くすることで、弱い兵器ではまったく敵わないということをユーザーには明白に伝えることが出来ました。しかし、『MM4』ではこの方式を封印しました。代わりにやったのが、「モンスターの攻撃力を上げる」ことです。

モンスターの攻撃力をより高くすることで、戦闘に時間をかけすぎると敵の猛攻に耐えられない。ゴリ押しすると全滅するという流れが出来ました。勝つも負けるも、短時間で決着がつくようになったのです。

この方式が良いか悪いかは、まだわかりません。ただ、『MM4』では、これまでとは少し違った戦闘が体験できることをお約束します。

今回は戦闘バランスの調整のことだけを書きましたが、調整前でボロボロの石ころのようなゲームを、輝くダイヤモンドに変えていくためには、他にも様々な調整が必要です。イベントの調整、グラフィックの調整、インターフェースの調整、音楽の調整、デザインの調整……。それぞれの担当者が時間の許す限りゲームを磨き上げてくれます。

その結果、石ころがダイヤになったのか? ただの投げやすい石になっただけか? あるいは“モジョイモ(注釈①)”になってしまったか? それはハンターの皆さんが実際にプレイして確かめてみてください。

では今週も、懐かしい合い言葉で決めましょう。

「メタルマックスは、絶対オモシロイ……ぜよ!!!」

■今回の土佐弁

いごっそう……快男児、酒豪、頑固で気骨のある男などを意味する。
めっそ……たいへん、とても
~ぜよ……~だよ、~ですよ

■注釈① モジョイモ

汚染された土地でもすくすく育ち、しかも実の部分の毒性はとても高いと言う、ありがたい食用植物。(参考:『MM4』アイテム説明文)
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