
【第3回】みてるぜ!
また今週も、新MM通信の時間がやって来たぜよ~!
ゲームを作っている人間にとって、もっとも気になること。
それは自分たちの作ったゲームソフトが発売された直後の「皆さんからの反応」です。
ちゃんと受け入れられるのか、喜んでもらえるのか、とても心配なんですが、その反面、楽しみでもあります。人づてに話を聞いたり、アンケートの結果を見たり、あるいはネットでの評判を見るのが大好きです。
ふと、『MM3』や『MM2R』を発売したときに、どれぐらいの情報を集めていたのか気になったので、当時つけていたメモを見返してみました。
『MM3』のときのメモは約150項目。
『MM2R』は、なんと約700項目にもおよんでいました。
では、そのメモにはどのようなことが書いてあるのか、ご覧いただきましょう。
メモはこじゃんとあるので、今回は『MM3』のときのものから抜粋します。
あらかじめご了承ください。
【システムまわりの不満】
※次回作はユーザーフォロー(とくに初心者)より、プレイの快適感を優先する。※『MM2』を参考にして、初心に返ろう。
- お店での売り買いが不便。
- お店で人間武器を買ったとき、その場で装備できない。
- クルマのパーツを買い替えるとき、装備しているもの外さないといけない。
- クルマ装備などを売るとき、L・Rボタンでクルマを切り替えられない。
- クルマを改造するとき、他のクルマを選び直したいのに、
いちいち最初からやり直さないといけない。
ついでにお店のNPCからいちいち文句をたれられる。 - 複数台ある車輛の改造やクルマに搭載されている品の売却は、
最初の会話からいちいちやり直させられる。 - スタンプ集めのところでいくつかの品物を売るとき、
最初の会話からいちいちやり直させられる。 - スイッチやレバーを調べたとき、Bボタンで戻ることができない。
- 敵がドロップしたクルマ用のアイテムを入手する際、
積載量がオーバーしたときに、それを拾うかどうかの選択肢を入れる。 - Cユニットとエンジンは外せない。
- クルマの装備&アイテムを同時に見られない(積載量は共有なのに)。
- クルマ装備とその持ち物の関係、とくにクルマ装備の入れ替えがややこしい。
- 装備中のクルマ装備品を他のクルマへ移動できない。
- クルマの乗り降りのシステムがわけわかめ。
- 回復アイテムなど、残数がゼロになって別のものを使うには、
最初から操作しなければならない。
おもにシステム部分のコマンド操作や、お店に関係する不満をまとめたものですね。やはり、クルマ関係のことが多くなっています。それほどクルマ関係のシステムは厄介なんです。
『MM2R』を作るときには、これらのことを踏まえて、可能な限りインターフェースを改善しました。『MM3』と『MM2R』の両方をプレイしていただいた方には、このメモを元に頑張って改善した成果がおわかりいただけると思います。
次に、クルマの穴の改造で苦悩したことがわかるメモをご覧いただきましょう。
【クルマの穴改造をやり直せるようにする】
- 人は後悔するものだ。いつでも、クルマの穴を元に戻せるようにする。
- 穴改造は、固定武器がつかないパターンも作る。
- 改造屋によって改造パターンが変わるようにする。
または固定武器がつく / つかない という分岐を用意する。 - ただ「穴をふさぐ」という改造も取り入れよう。
- 固定武器でしか実現できないアイテムは、
「ドリルをつける改造」とか、「翼をつける改造」などにするか。 - 『MM2』にあった“穴を指定してどの穴に改造するか?”というパターンを実装する。
- データ構造は、各穴に“穴ID”を設定し、穴IDをインデックスのような一覧にして、
穴データを参照すると効率がいいのでは? - 穴データには、
「穴の位置」
「穴タイプ」(大砲、機銃、S-E)
※シャシーには“現状の穴タイプを引き継ぐ”という穴タイプも作る。
「ドリルになる/ならない」(なる場合はドリルのアイテムNO.と新たな穴ID)
「翼がつく/つかない」(つく場合は翼のアイテムNO.と新たな穴ID)
※固定武器をつける/つけない の改造でもOKか?
「穴ふさげる/ふさげない」
「改造後に増える重量」
「改造できる穴タイプ」
※穴を個別に改造するため、大砲タイプ、機銃タイプ、S-Eタイプに改造できるかどうかの
フラグ。
……などのデータをもたせる。 - 改造屋コマンド
→穴のパターン改造
→穴の個別改造
→穴以外
※固定装備をつける“固定装備改造屋”を新たに追加。
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『MM2R』のシャシー改造屋 | 穴の個別改造が可能になった |
このメモから、『MM2R』の個別改造のシステムが生まれました。いや~大変でしたよ! メモには“固定装備改造屋”など、実際には採用しなかったことも書かれていますね。でも、データ構造の仕組みなどは、このメモを書いた時点でおおむね出来上がっていたようです。
ほか、具体的に対応を記述しているメモもありました。
【改善点】
- 特性コマンド(バルカンラッシュなど)もコマンドを記憶するようにする。
- 迷彩シールドのスイッチの仕様を改善。
- 斜め移動を取り入れるか?(ハマりが怖いけど……)
- フィールドサブマップを拡大できるようにしたい。
開くエリアももっと狭くしたい。


『MM2R』通常時のフィールドマップ&拡大したもの。
これらは、『MM2R』でも代表的な改善点ですね。開発当初から改善項目として上がっていました。できれば『MM3』のときに直したかったんですよ。けんど、このときはあれが精一杯。『メタルサーガ ~鋼の季節~』や、開発を中断した『メタルマックス ワイルドアイズ』のことがあったので、とにかく完成させることを目指したんです。
なんと、こんなメモも残っていました。
【もしも『MM3』の作り直しが可能なら】
△軌道ステーションにあるテスラセルの位置を別のマップに変える。○ロックハッカーをイベントアイテムにして、2周目の引き継ぎをなくす。
△軌道ステーションのハシゴワープ。
○マグナムガデスの連射速度を上げる。
◎改造を元に戻せるようにする。
○特殊コマンドのカーソル位置。
○エンカウント率を下げる。
○2周目に主人公を外せるようにする。または、1周目から選べるようにするか。
○アイテム系クエストの数を減らす。
○砂漠以降の敵を若干弱くする。HPを減らす方向性かな。とくにクルマ系のモンスターを。
○キラモンスターのバランスを変える。もっと倒しやすくする。
出会ったらお得なモンスター程度にする。
△量子ドールの説明文を効果別に変える。
▲バイオエンジン=バイオタンクに装備すると、
バイオタンクのレベルに応じて積載量が増える(ボーナスがある)。
▲バイオタンクの特性見直し。ラッシュ系などを入れる。
▲バイオタンクのシャシーが変化するレベルを下げる。
▲アラモジャックのバランス。チャージモードに入ると倒せないらしい。
○ディアブロからは逃げられるようにする。
▲レアドロップを交換できるようにして、『MM2R』のリメイク版に持ち越せるようにする。
△レアメタルの出る確率を上げる。
○トランスゴンの行動パターンを完全ランダムに変更。
△レアドロップの確率を上げる。
※補足:優先順位は◎→○→△→▲となっております。
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『MM3』に登場したトランスゴンのモデリングデータ | 『MM3』バイオタンク(マンモス) |
あはは、これは後悔の塊ですね~。もしも『MM3』のリメイクをする機会があったら、このメモを引っ張り出して参考にすることでしょう。実際、「マグナムガデスの連射性アップ」とか、「改造を元に戻せるようにする」とか、このメモに書かれていた一部は『MM2R』で実現させています。
「軌道ステーションのハシゴワープ」のことも書いてあります。あれ、本当はワープではなく、「青い空の中をめっさ長いハシゴで降りて行きゅうぜよ~!」というイメージだったんですけどね。マップチェンジ後にハシゴにつかまる、という処理がマスターアップの土壇場で出来ないと言われ、泣く泣くあのような処理に変えたのです。
あ、後悔の塊のメモはまだありました。
【その他】
- ネタ戦車(オミコシー)などは入手を簡単にする。アイテム集めなどをさせると、
手に入れたクルマがシュミじゃなかった場合、がっかり感がデカい。 - ビームは反射させ過ぎないようにしよう。
反射するぶん、ダメージ倍増があってもよかったかも。ビームだけ弱点とか。 - WANTEDモンスターのドロップアイテムで、ただ売るだけのアイテムはピンとこないようだ。
パイロンとか。 - 時間経過系のフラグはやめよう。
プレイヤーは一度行って進展がなかったところには再び行かず、
ハマってしまう場合が多い。 - 今回のぬめぬめ細胞や、テスラセルのエネルギーのように、
楽に探せるポイントをユーザーにうまく伝えてあげないとダメなようだ。 - 『MM4』では、メインシナリオにテスラセル系のイベントは入れないようにしよう。
露骨に手順が見えるものはやめる。 - 最強クラスの武器は激レアのポップアイテムにするといい。
そうすることでリセット回数は減るだろう。
とくに「なんでもBOX」系のアイテムはやめよう。
ボスのレアポップも『MM3』よりは確率を上げよう。 - クルマ系のモンスターが装備系をドロップするようにしよう。
レアリティが違う装備品をユーザーに与えるため。

『MM3』ソイヤウォーカーのモデリングデータ
このメモにある「ネタ戦車(オミコシー)」というのは「ソイヤウォーカー」のことですね。それから、ビームを反射させすぎたと反省している。
ははは。いま見ると自分でも笑えます。
ドロップアイテムの確率の難しさに悩んでいた様子も見て取れますね。
いまでも、このあたりのことはベストな回答が出せずにいます。う~む。
まだまだありますが、最後にもうひとつだけ。
【検討事項】
- プレイヤーによって異なる売り物をどうする?
『MM2R』でも導入する? やめる? 廃止した場合、強烈アイテムは見つけにくいトレーダーキャンプに配置する? 文句を言いながらもみんな楽しんでいるようなので、“あり”でいくか?(註:結果として『MM2R』でも採用となった) - 「スモールパッケージ」「玄武タービン」「ビーナスジェット」など、『MM3』で有名になったアイテムは、別の方法で登場させよう。『MM2R』はまったく別パターンにする。「あのパターンだ」とすぐにはわからないように。
- 1台のクルマに複数人乗れるようにするか? オリジナルの『MM2』とゲーム性を変えるため。
- 人間用特技をバイクに乗っていても使えるようにするか?
しかし、それだとバイクが強くなり過ぎるのでは? - ダブルCユニット
ダブルエンジンが出来ない車輛向けの救済策として導入するのはどうか?
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『MM4』ではクルマに複数人乗り降りできる | “ダブルCユニット”による性能アップも可能に |
これらのメモは、検討事項の中でもおもに採用されたものですね。もし、このメモがなかったら、“クルマの複数人乗り”や“ダブルCユニット”は存在しなかったかもしれないんです。
そうそう、『MM4』でも、プレイヤーによって異なる売り物があります。すべて新アイテムになっていて、いままでにないものばかりです。
それがどういうものかは、実際にプレイして味わってみてくださいね。
ほんだら、今週も懐かしの合い言葉でお別れです。
「メタルマックスは、絶対オモシロイ……ぜよ!!!」
■今回の土佐弁
いごっそう……快男児、酒豪、頑固で気骨のある男などを意味するこじゃんと……すごくたくさん
けんど……けれども
ほんだら……それでは
めっさ……たいへん、とても
~ぜよ……~だよ、~ですよ