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Dr.タウチのMM通信


【第5回】バランスの変移

またまたお会いしました、Dr.タウチです。『MM4』ではディレクターをやっています。……といっても、実際にはゲームデザインに、シナリオ作成、戦闘プログラムなどなど、いろんな作業に関わっています。

そんな数多くある作業のひとつに「ゲームバランスの調整」があります。バランス調整については第2回のコラムでもお話ししましたが、今回は『MM』シリーズにおける「バランスの移り変わり」について掘り下げてみましょう。


『メタルマックス』戦闘シーン。

シリーズ第1作目『メタルマックス』では、クルマに装備できる兵器は「主砲(大砲)」「副砲(機銃)」「S-E」の3種類を、それぞれひとつずつ搭載するという方式でした。『MM3』や『MM2R』のように兵器を最大5つ、しかも大砲だけ5つとか、機銃だけ5つといったようなことはできません。ですから、それぞれの兵器には役割がありました。

「大砲」は、ボスや強敵向けの強力な武器(弾数に制限アリ)。
「機銃」は、ザコモンスター向けの武器(弾数に制限ナシ)。
「S-E」は、とっておきの強力な武器(弾数は極端に少ない)。

しかし、これら兵器の役割を少し崩すものがありました。それは「特殊砲弾」です。

「特殊砲弾」は、大砲でしか撃てない特別で強力な攻撃手段です。しかも、シャシーの弾倉の数だけ撃つことができます。そのために、「てっこう弾=会心の一撃が出やすい、敵のパーツを破壊する」などの強力な特殊砲弾は、S-Eのお株をうばってしまったのです。

また、「予備弾(シャシー弾倉に詰める通常弾)」は、機銃の“弾倉が無制限”という特性をうばったうえに、大砲の“弾倉が少ない”という弱点さえも無意味化してしまいました。

つまり、「特殊砲弾」が“大砲最強伝説”を生み出した立役者なんですね。

『MM2』でも、このバランスはほとんど崩されることはありませんでした。むしろ、「バースト砲=2連射できる大砲」の登場で、さらに“大砲最強伝説”が不動のものとなったのです。

スーパーファミコンで発売された『メタルマックス リターンズ』(以下、『MMR』)でも“大砲最強伝説”は続きます。一部、強力なS-Eはありましたが、大砲の牙城を崩すほどではなかったのです。

そして17年後、『MM3』です……といきたいところですが、その前にボクたちは『メタルマックス ワイルドアイズ』を開発していました。
気になったので、その頃の資料を確認してみたところ……。

わはは! なんと“大砲最強伝説”はそのまんまでしたね。「予備弾」も健在。何ひとつゲームバランスを変えていません。
※ただし、装備できる兵器(穴の数)は3つから最大5つに増えています。この仕様は『ワイルドアイズ』のときに生まれていました。

で、『MM3』です。このときに、いままでのゲームバランスが大きく変化しました。
この17年の間に何があったのでしょうね。


『MM3』戦闘シーン。ラッシュ系でガンガン攻撃するぜよ!

『MM3』では、最大5つまで穴の改造ができた。“砲弾ゲージツ”もここから。

『MM3』では、大きく分けて以下の4つの改革を試みました。

① 装備可能な兵器の数を3つ→5つに拡張。すべて大砲にするなども可能に!
② ラッシュ系の導入!
③ 特殊砲弾の希少度をアップ! 予備弾の廃止!
④ 各兵器の役割の壁を軽減!

①の改革は、ゲーム性をよりアップさせるために不可欠な要素です。
『MM3』や『MM2R』を遊んでくれた方なら「穴の数をまた3つに戻してくれ」なんて言うはずないですよね?

②でラッシュ系を導入したことも、拡張した穴を有意義なものにするために欠かせない改革です。これによって、戦闘の派手さや爽快感が爆発的に上がりましたから。
また、これはシャシー改造の指針にもなる仕様です。これまでのように、ただ穴の数を増やす改造ではなく、「キャノンラッシュするために大砲を5つにしよう」とか「バルカンラッシュさせたいから機銃を5つにしよう」など、シャシー改造に明確な目的意識をもたせることができるのです。

③にある特殊砲弾の希少度をアップさせたのには、理由があります。
宮岡さんとボクの間では、「特殊砲弾が最強」になるバランスを“よし”としなかったのです。
もっと具体的に言えば、ボスとの戦闘が「てっこう弾オンリー」となることを“つまらない”と判断したからです。

そこで、まずは「予備弾」という仕組みを完全排除。これで大砲の弾倉が活きてきます。
「強力だけど、弾数が少ない」、「そこまで強力じゃないけど、弾数が多い」といった弾倉による個性を、少なからず大砲につけることができたのです。
いや、“もともとあった個性を生き返らせた”といったところでしょうか。

そして「特殊砲弾」を非売品にして、「砲弾ゲージツ」でのみ製造可能という仕様に変更しました。手軽にショップで買えないようにすることで、特殊砲弾は気軽に使うようなものではない、本当に「ここぞ!」という場面で使う(という考えをめぐらせる)ようになるだろう……と考えたのです。

④の兵器の役割の軽減。『MM3』では、これまでのシリーズで貫いてきた3種の兵器の役割の壁をゆるくしました。たとえば、弾数が無制限の大砲やS-E、あるいは大砲やS-E並みに強力な機銃の登場! はたまた大砲並みに弾数の多いS-E群! などなど。これらは、各兵器のもつ役割をぶっ壊しました。

では……なぜそんなことをする必要があったのでしょう?

それは、ラッシュ系の導入が要因となっています。ユーザーは、ラッシュ系を体験するためにシャシーの穴を「すべて大砲」や「すべて機銃」に改造したくなるはずです。そうした場合、各兵器の役割が過去のシリーズのままだったらどうなったか。

「穴をすべて大砲にしたら、ザコ戦ですぐに息切れ!
 息切れするから、ラッシュするのはボス戦だけにしよう……」
「穴をすべて機銃にしたら、ボス戦ではろくに戦えない!
 このシャシーじゃ、ボス戦に出すわけにいかないじゃん!」

そうです。せっかく新しく導入した爽快感バツグンなはずのラッシュ系が、まっことズツナイものになってしまうのです。プレイヤーには、そんな不利益を考えずに大砲を5つにしたり、S-Eを5つにしたりして、思い思いの改造を楽しんでほしかった。
だから、ラッシュ系を活かすためには、各兵器の役割分担をぶっ壊すことが必須条件だったのです!

と、このように大きな改革を断行し、そのユーザーの反応を見たあとで、次は『MM2R』の制作です。


『MM2R』のシャシー改造屋。個別改造や改造のやり直しができた。

ラッシュ系は予想していた以上に好評でした。なので、『MM2R』ではゲームの序盤からラッシュ系を体験できるようにしました。……とは言っても、同じことを繰り返したって面白くない、と感じてしまうのがゲームクリエイターというもの。悪いクセですねー。

『MM2R』では、ただ好きなラッシュ系にするのではなく、攻略の一環としてシャシーを改造するように仕向けたのです。奇しくも、『MM2R』ではシャシーの穴改造を固定パターンだけでなく、個々の穴を自由に改造できるようになりましたから(なぜ『MM3』からそうしなかったのかは、いずれ別の機会にお話ししましょう)。

さて、そういう具合にさらなる改革を試みたところ、『MM2R』は「バルカンラッシュ」で最後までクリアするのは難しくなりました。「キャノンラッシュ」も、一部のモンスターでは苦戦するようになりました。
……で、結果として今度は“S-E最強伝説”を生み出してしまいました。まあ、これは“シーハンター最強伝説”【運営・注A】とも言いますが。
※実際には、ストライク系の導入で、ラッシュ系すら駆逐する形になりました。“雷神伝説”【運営・注B】の誕生です!

このバランスの評価はユーザーの皆さんにお任せするとして、『MM2R』では『MM3』とはまた異なる遊びを提供できたかな、と思います。

そして、いよいよ『メタルマックス4 月光のディーヴァ』です!


『MM4』戦闘シーン。青い数値は“超会心の一発”!

多くは語らんぜよ!

みんなの大好きな大砲を復活させました。そう、“大砲最強伝説”です!(まあ、相変わらずS-Eも強いし、機銃だって最後まで使えますけどね)。
ラッシュ系、ストライク系に続く、新たな系統も存在します! そして、誰もが驚く改革もあります! ふふふ……。

結局、多くを語ってるぜよ!

とにかく、『MM4』がどんなバランスに仕上がっているかは、実際にプレイして味わってみてください。

では、今回もいつもの合い言葉でお別れです。

「メタルマックスは、絶対オモシロイ……ぜよ!!!」

【運営・注A:シーハンター最強伝説】

『MM2R』に登場するS-E。ある特定の条件を満たすと、イスラポルトの町にあるショップで購入できる。重量が2.4tと、ほかの兵器と比べて軽い。

シーハンターは特殊砲弾の「てっこう弾」の特性を持ち、水中に潜った敵に命中するだけでなく、パーツ破壊効果を持ち、会心の一発の発生確率も高い。

「手強いボスにぶち当たったらシーハンターを使え!」が当時の攻略の合言葉になっていた。


【運営・注B:雷神伝説】

『MM2R』にて、ゲパルトの穴1の武器を「ドリルブラスト」に改造。それにCユニットの「電撃的アミーゴ」をふたつ搭載すると、とてつもなく強くなるというもの。

「電撃的アミーゴ」の特性“トリプルストライク”は、攻撃をプラス2回できるという効果があった。

「ドリルブラスト」はもともと2回攻撃ができる兵器だったため、「電撃的アミーゴ」をふたつ搭載すると、1ターンで(ドリルブラスト2回攻撃+電撃的アミーゴ2回攻撃)×2=計8回攻撃が可能になる。

しかも「ドリルブラスト」の弾数は無限で、 当時、最難関のモンスターと言われた“母艦サウルス”を簡単に撃沈することができた。
この「ドリルブラスト」に電気属性があったことと、母艦サウルスとの戦いで雨が降っていたことから、一部の熱烈的なファンの間では「雷神様」と呼ばれていた。
この名は、ゲパルトがタイシャーの町の“戦神様”だったことに由来する。


■今回の土佐弁

いごっそう……快男児、酒豪、頑固で気骨のある男などを意味する
まっこと……本当に
ズツナイ……切ないこと、苦しいこと
~ぜよ……~だよ、~ですよ
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