special

Dr.タウチのMM通信


【第9回】金輪際な話

毎週金曜日のお楽しみ、Dr.タウチの新MM通信ぜよ~!
今回のお題は「金輪際(こんりんざい)な話」!


『MM2R』の金輪際ホテルの外観。地下1階、地上13階+屋上まであった。

何だかおかしなコラムのタイトルですが、『メタルマックス』のファンならわかりますよね?
『メタルマックス』で金輪際といえば、『MM2R』から登場した「金輪際ホテル」のことです。
金輪際ホテルは階層が多くてまっこと広く、ギミックもむずかしいので「こんなダンジョンはもう金輪際ごめんだ!」とプレイヤーにいわしめた、あの問題の場所です。

そして、“殺人事件”というRPGでは異例のイベントが発生することも、金輪際ホテルがプレイヤーの脳裏に焼きつくことになった要因でしょう。
これを我々の業界用語で「トラウマ」と呼んでいます(そんなこと、いわんぜよ!)。

じつはこの金輪際ホテル、『MM3』のときから計画していました。
“金輪際ゴースト”の棲み家として登場させる予定だったのです。


金輪際ゴーストのWANTED表示画面。
報酬金額には、俗にいう悪魔の数字“666”がある。

しかし、諸事情で金輪際ホテルのマップをカットすることになり、棲み家を失った金輪際ゴーストもまた、その出番をなくしました。
『MM3』で「父親がいなくなった」と語っている母と子がいたのを覚えていますか?
あの親子のセリフは、金輪際ゴーストに関するクエストの名残なのです。
結局、『MM2R』で金輪際ゴーストに関するクエストが復活し、その母子も再登場できました。
「消えた父」というクエストがそれです。

『MM2R』で金輪際ホテルのアイデアを採用したのには、理由があります。

それは簡単な話。
じつは『MM3』を作っていたとき、金輪際ホテルはほとんど完成していたからです。
グラフィックデータだけでなく、プログラムやスクリプトなども。

※運営注釈:スクリプト【script】……コンピュータープログラムの一種。英単語では、台本や脚本、原稿、筆記体などの意味を持つ。

ではなぜ、完成形まで近づいていた金輪際ホテルのクエストをカットしたのか?
それは、ゲームの開発者たちがつねにぶつかる問題。「ROMカードの容量不足」です。

ゲームのROMカードには、データを入れられる容量に限界があります。
『MM3』のときにも、その問題が発生しました。
それをクリアするために金輪際ホテルと、もうひとつのダンジョンを削除したのです。
このとき、2体のWANTEDモンスターも併せてカットされています。
ただ、そのままなくすだけでは、ボリューム不足になってしまいます。
そこで当時、カットされたWANTEDモンスターの代替案を考えました。

それが“スクラヴードゥー”と“アメーバブラザーズ”です。


『MM3』でWANTEDモンスターとして登場する“スクラヴードゥー”と“アメーバブラザーズ”。

スクラヴードゥーは、ふつうっぽいモンスターなのにボス並みに強い、おまけにザコらしくないギミックをもつ……という設定で作られたモンスターでした。
ですから、スクラヴードゥーをザコからWANTEDモンスターへ昇格させるにはもってこいでした。

一方、アメーバブラザーズですが、スクラヴードゥーほど簡単には決まりませんでした。
結果として、倒すのにとても苦労する割には報酬が少ない、何だか「冗談みたいだろ!?」とプレイヤーがいいたくなるようなWANTEDモンスターになってしまいました。
苦肉の策かもですが、それもまた『メタルマックス』らしさだと思って笑ってください(笑)。

おっと、話がそれたので、元に戻すぜよ。

というわけで、すでに『MM3』で完成していた金輪際ホテルですが、容量不足でやむをえず入れることができませんでした。
それがあまりにも不憫に思えたので、「次回作ではきっと復活させよう」と決意。
その機会が『MM2R』で訪れた、というわけです。
ちなみに、『MM3』の金輪際ホテルは、あくまでも金輪際ゴーストの棲み家という扱いでしかありませんでした。
あの事件……“金輪際ホテル殺人事件”は、『MM3』を開発していた当時、まだ考えていなかったのです。

「RPGの中で、殺人事件が発生する」。
これは、ボクが昔からやってみたかったことでした。


『MM2R』で幕を開けた、金輪際ホテル殺人事件。

そして『MM2R』の開発が決まったとき、「今度こそ殺人事件イベントを入れよう」と思いました。


『MM2R』のイスラポルトの港町。この世界の物流の拠点になっていた。

当初、殺人事件の発生場所は、イスラポルトの町でした。
「イスラポルト殺人事件」……言葉の響きも悪くない。
しかし、イベントのプロットを考えていると、ひとつの問題が浮上してきました。

※運営注釈:プロット【plot】……小説や映画などで、構成や枠組みといった意味合いを持つ。
物語の大まかな内容を考えること。

殺人事件イベントが発生したら、解決するまでプレイヤーをその場所に束縛しないといけないからです。
そうじゃないと、サスペンスがなくなるし、臨場感も生まれません。
何より、殺人事件が起こっている最中に『メタルマックス』の世界を歩き回れるのは不自然ですよね?

イスラポルトの町は、プレイヤーを閉じ込めるに適していない場所でした。
地上はもちろん、転送装置に定期船と、町の外へ出る方法がいくつもあります。
それに、ビイハブ船長が船を出すというイベントもありますしね。
「嵐でイスラポルトの町から出られない」、という策も無理そう……。

という理由で、イスラポルトの町をあきらめ、新たな事件現場を探しました。
イスラポルトでの失敗から、オリジナルの『MM2』の町や施設で、殺人事件イベントを発生させるのはよくないと考えました。
そこで、目に留まったのが『MM3』でカットされた「金輪際ホテル」なのです。

「金輪際ホテル殺人事件」……うん、これはイイ響き!

ここにしよう、ここしかない!!
「金輪際ホテル殺人事件」のイベント作成は、このような感じで火ぶたを切ったのでした。

それにしても、金輪際ホテル殺人事件のイベント作りは、本当に厄介なものでした。
ショートストーリーとはいえ、アドベンチャーゲームを1本作るのと同じぐらいの工程がありましたからね。

通常のイベントでしたら、ボクは一週間かからずに完成させられます。
ごく短いものや簡単なものならば、1日でできることも。
自分で言うのもアレですが、シナリオを書き上げるのはけっこう早いんです。
そんなボクが、金輪際ホテル殺人事件のイベント制作に延べ3ヵ月もかかってしまいました。
何度か「完成をあきらめよう」と思ったほどです。
それほど苦労した「金輪際ホテル殺人事件」。
では、ここからはそのイベントの内容や背景について解説しましょう。

■ドラマには役者が必要だ!


『MM2R』のクエスト「7人の冒険者」の始まり。
7人の冒険者を金輪際ホテルまで案内する、という内容。

登場人物は、被害者に容疑者、真犯人、そして事件の謎を解く探偵役。
探偵役は、当然ながら主人公であるプレイヤー自身。
被害者や容疑者は、NPCが演じるしかありません。
そこで集められたのが、「7人の冒険者」たちなのです。
金輪際ホテルにいる“金輪際ゴースト”を倒すと発生するクエスト「7人の冒険者」は、その後の「金輪際ホテル殺人事件」をお膳立てするためだけに用意されました。

ちなみに最初は、登場人物が6人(3人パーティがふた組み)だったんです。
ただ、犯人を2人にする必要が出てきて、登場人物を急遽1人増やすことにしました。
でも、イベントに登場するふた組のパーティが、3人と4人編成というのは、何かヘンですよね?
そこで、ガイド役のトレーダーに3人パーティがふた組み、という構成を思いつきました。
総勢7人。ひとつのイベントで登場する人数としては異例の多さです。
ちなみにクエスト「7人の冒険者」は、ただ単に7人を金輪際ホテルへ連れていくだけではなく、それぞれの名前や性格、人間関係をプレイヤーに伝える役割もあったのです。

■ドラマは『メタルマックス』の世界で起きている!


クエスト「金輪際ホテル殺人事件」のワンシーン。
アーチストが死んでいるところを発見する場面だ。

「金輪際ホテル殺人事件」のドラマのプロットがある程度出来上がったときに、ふと思いました。
これ、単なる殺人事件では、全然『メタルマックス』っぽくない……と。
そりゃそうですよね。
アドベンチャー形式で、しかも殺人事件モノって、まったく違うゲームだもの。

ここは、散々悩んだところです。
こうなると、いいアイデアがボクの頭に降りてくるのを待つしかない。
どれほど悩んだでしょうか。
イベントの制作に3ヵ月もかかってしまった要因は、コレにあった気もします。

そしてある日、ふと浮かんだアイデアが「死んだふり」でした!

「死んだふり」は、『メタルマックス』固有の職業「アーチスト」の特技のひとつです。
被害者と思われた1人が、じつは特技の「死んだふり」をしている犯人のひとり。
そして、その死んだふりを検屍するナースは共犯者……。
うんうん、だんだん『メタルマックス』らしくなってきたぜよ!
犯人たちの職業だけが明確なのは不自然なので、ほかの4人の冒険者もそれぞれ割り当てることにしました。
『MM2R』の職業は、ちょうど6種類でしたからね。
これで、6人の冒険者に個性が出て、プレイヤーにも伝わりやすくなりました。

■ドラマはガケの上ならぬ、
 ビルの屋上でクライマックスを迎える!


金輪際ホテルの屋上にて。最後にどんなドラマが待っているのか!?
ちなみに、この殺人事件の結末は選択肢で変化しました。

ドラマのクライマックス……追い詰められた犯人は、犯行の動機を語り始めます。
この殺人事件における犯人の動機は、簡単にいえば“復讐”。
そう、『MM2R』の主人公の目的も“復讐”なのです。
おまけに、犯人と主人公の境遇は、どことなく似ている。

数年前、犯人が住む村を巨大な悪の組織“バイアス・グラップラー”から守るために、ハンターたちが集められました。
しかし、村を襲うグラップラー軍団の中に四天王のひとり“テッド・ブロイラー”がいることを知り、一部のハンターは村の者にそのことを告げもせず、逃げ出したのです。
このときに逃げ出したハンターが、金輪際ホテルに来た被害者たち。
当然、村は全滅。奇跡的に生き残ったのが、犯人の2人だったというわけです。

テッド・ブロイラーから逃げ出して、生き延びたハンターたち。
テッド・ブロイラーに立ち向かって、殺されたハンターたち。

この違いが、犯人と主人公の“復讐”する対象を変える形となった。
犯人は逃げたハンターたちを恨み、主人公たちはハンターたちを殺したテッド・ブロイラーを恨んだ。

もしも、主人公たちがグラップラー軍団やテッド・ブロイラーなどから逃げ出していたら、復讐するのではなく、復讐される側になっていたのかもしれません……。

最後に、金輪際ホテルのアイテムの話をひとつ。

『メタルマックス』は、ほかのゲームではあまりやらない方法で世界観を語っています。
それは、木箱やタンス、冷蔵庫などの中に入っているアイテムで、世界観を語るという手法です。
プレイヤーが住人たちの痕跡を目にすることで、住んでいたのがどんな人物か? そこがどんな場所だったのか? などの背景を想像できるようにしてあるのです。

金輪際ホテルにはたくさんの部屋があり、数多くのアイテムが配置されています。
そのひとつひとつが、ただ無意味に存在するのではなく、きちんと背景を考えて配置されたアイテムなのです。
もし、また金輪際ホテルに行くことがあれば、各部屋にどんな人物が泊まっているのか? 想像するとおもしろいでしょう。

金輪際ホテルだけでなく、『メタルマックス』の世界中に配置されたアイテムのひとつひとつに、それぞれ背景があります。
『MM3』や『MM2R』はもちろん、『MM4』でも。
旅の途中、何かアイテムを見つけたら、思い巡らしてみてください。
それがなぜ、その場所にあるのかを──。


『MM4』にある金輪際リゾートの入り口。
ここでもクエスト……いや、いくつかの事件がプレイヤーを待ち受けている。

さて、カッコよく決まったところで、いつもの合い言葉です!

「メタルマックスは、絶対オモシロイ……ぜよ!!!」

■今回の土佐弁

いごっそう……快男児、酒豪、頑固で気骨のある男などを意味する
まっこと……本当に、すごく
~ぜよ……~だよ、~ですよ
PAGE TOP