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Dr.タウチのMM通信


【第10回】穴の改造の話

「で?
 このコの体を
 どう、変えたいんだ?

こんにちは、Dr.タウチです!
いきなりの書き出しで驚かれたかもしれませんが、これは『メタルマックス』シリーズの立ち上げにプロデューサーとして参加していた“鬼才”桝田省治氏が書いた、シャシー改造屋の名セリフです。
桝田氏は『MM3』以後のシリーズには参加していないのですが、この独特のノリはその後の『メタルマックス』シリーズにも脈々と受け継がれ、シャシー改造屋の個性を際立たせています。

というわけで、今回はシャシーの穴の改造の話をしましょう。
まずは『メタルマックス』の1作目(以下『MM1』)について!


ファミリーコンピュータの『MM1』。強さ画面もシンプルだ。

『MM1』では、シャシーの穴は最大3つ。
しかも、「主砲(大砲)」「副砲(機銃)」「S-E」が各ひとつずつと決まっていました。
この時のシャシー改造は、試行錯誤しながら性能を変化させると言うよりも、単純にクルマをレベルアップさせるというイメージだったわけです。
当時はそれで十分でした。

自分で装備をカスタマイズしたクルマに乗って敵と戦うというゲームシステムは、斬新で、魅力溢れるものだったのです。


スーパーファミコンの『MM2』。色やアイコン、漢字も加わり、視認性がアップ!

そして『MM2』。
穴の数は3つのままでしたが、3つの穴をすべて大砲にしたり、大砲はひとつでS-Eをふたつにするなど、すべての穴を、個別に自由に改造できるようになりました。
『MM2』の段階でシャシーの穴の改造は、「レベルアップ」から「試行錯誤」へと変化したのです。改造と言う遊びのスタイルそのものが変化した結果、現在のシステムができあがったわけです。

そして、『MM2』の発売から17年……。


ニンテンドーDSの『MM3』。2画面で解像度も上がり、強さ画面がより見やすくなった。

『MM3』でシャシーの穴の改造は、さらに大きく変化しました。
穴の最大数は、3つから5つへと増加。
さらに、それぞれの穴を個別に改造するのではなく、あらかじめ用意された穴の組み合わせパターンの中から、好きなものを選択するという方式に変わりました。

残念ながらこのシステムは、『MM3』以前からこのシリーズを遊んでくれていたファンの皆さんには不評でした。

なぜ、『MM2』で好評だった“個別穴改造システム”をやめて、穴パターン改造にしたのでしょう?
その理由を説明するためには、開発中止となった『メタルマックス ワイルドアイズ』(以後、『MMWE』)まで話をさかのぼらなければなりません。

じつは『MMWE』を開発していた時、すでに穴の数は最大で5つに増加していました。
しかも、すべての穴の個別改造が可能!
要するに『MM2』の改造システムのまま、穴の数を3から5に増やしたわけです。
ただ単に「穴を2つ増やしただけ」なのですが、そこに盲点がありました。

『MM2』の場合、ひとつの穴に、大砲、機銃、S-E、そして“穴無し”と言う4つのパターンがありました。
1台のクルマには穴が3ヵ所あるので、その組み合わせは全部で、4×4×4=64パターンになります。
ところが、穴が5つとなると、4×4×4×4×4=1024パターンにり、その数なんと16倍!
穴が3つのときに比べて、960パターンも増加してしまうのです!

それだけなら、まだ何とか対処できたと思います。
困ったことに『MMWE』では、戦車の描画が2Dから3Dポリゴンへと変わっていました。

『MM2』のような2D描画ならば、シャシーに装備がつく場所を、絵の書き方でごまかすことが可能でした。
大砲、機銃、S-Eのそれぞれを取りつける位置は決まっていたので、少しばかり上下に位置がズレていても、それらしく見せられたのです。

ところが3Dポリゴンでの描画となると、そうはいきません。
シャシーに装着する装備は、どの方向から見てもちゃんと見えるようにくっつけないと、明らかに見た目がヘンになってしまうからです。
大砲を5門装備できるなら、大砲を装着する位置を、5カ所きちんと決めなくてはなりません。
クルマ1台ごとに、5つの穴×3種類の兵器=計15ヵ所。
それぞれの兵器が、それらしく装着できる場所を、データとして明確化していくという作業を、すべてのシャシーで行わなくてはなりません。
後ろの穴に大砲を装着しても、前方の穴の機銃が見えなくならないように、とか、S-Eをふたつ以上積んでもS-Eどうしがくっついたり、重なったりしないように、とか、気を配りながら‥‥。

また、『MMWE』の開発当時は、『MM3』や『MM2R』ほどシステムが洗練されていませんでした。
何と、S-Eには“右用”、“左用”といった派生までありましたからね。
これは3Dポリゴンにしたときに、側面につくS-Eを穴の種類で管理していたからです。
そのせいで、ひとつの穴のパターンが4から6に膨れ上がり……。

単純計算で……6×6×6×6×6=7,776パターンです。

こりゃたまげた! さすがに無理でしょ!
『MMWE』ではシャシーが10種類以上あったし、さらにこの時は「砲塔」という概念まで想定していて、その数20種類以上!
ということは……。

ごく簡単に計算すると……6×6×6×6×6×20=155,520パターン。

あははは、こんなの無理に決まっているぜよー!
(と言いながら、けっこう力づくでやろうとしていたんですけどね、あの当時は。)

『MM3』を開発する初期段階で、この“膨大な数の穴パターン問題”はわかっていたわけです。
そして、『MMWE』の教訓をもとにあれこれ悩み抜いた結果、“穴改造をパターン化する”システムが生まれたのでした。


『MM3』でクルマを改造する画面。改造には、いくつかのパターンが用意されていた。

まず、すべての穴パターンに対応するのではなく、素敵と思われるいくつかの組み合わせだけを抽出して、データを絞りこみました。
定食屋のA定食B定食みたいな考え方ですね。

側面につくS-Eなどは、固定武器として表現しました。
いたずらに穴の種類を増やすのではなく、「ドリルしかつかない穴」「翼専用の穴」というように制限したのです。
これによって、新たに穴の種類を増やす必要がなくなり、神でなくても作成できる程度のデータ量に収めることが可能になりました。

『MM3』の、“いくつかある穴パターンから選択する”というシャシー改造システムは、こうして生まれたわけですが、諸般の事情から、シャシーの穴が元に戻せなくなってしまったこともあって、結果は‥‥、不評‥‥。うううっ!

そこで、『MM2R』の開発が始まった時に決意しました。
「穴の個別改造を復活させよう!」と。

ありがたいことに、固定武器システムという概念がすでに実現していたので、目指す穴パターン数は1,024!
『MMWE』のときの約15万という数字に比べれば、可愛いモンです。

この数字をクリアするには、ただこじゃんとデータを作成したのではダメ。
『MM2R』に登場するシャシーは17種類なので、
1024の穴パターン×シャシー17種類=17,408パターンになるのです。
これを効率よく実現するシステムを、新たに構築する必要がありました。

幸運にも、その方法は、開発初期の段階で思いつくことができました。
いままでは各シャシーに、穴に関するデータを持たせていたのですが、『MM2R』ではそれを切り分けて、“穴のデータ群”というものを用意したのです。
ちなみに、穴のデータは、「穴の種類」だけでなく、「どの場所につくか?」「固定武器か?」などといった複数のデータの集まりです。
“穴のデータの群”を全シャシー共通のものにすることで、データの総数を230パターンまで絞りこむことに成功しました。
あとは「各シャシーの穴がどのように改造できるか」というデータがあればいいのです。
それでも、その総量はハンパないですけどね。

なんやかんやで『MM2R』の穴改造は、“穴なし”を含めると最大7パターンになってしまいました。
確認作業の総量は少なく見積もっても……7×7×7×7×7=16,807パターンに!!
これじゃ作業量が減るどころか、むしろ増えているぜよ!
結局、これは確認作業用のツールを開発して、対応することになりました。
大変なことには変わりませんが、作成するデータ量はぐっと減ったので、ずいぶんラクになったのです。
こうして“個別穴改造システム”が復活した『MM2R』を、皆さんの元へ届けることができました。


『MM2R』のシャシー改造屋

『MM2R』を遊んでくださったユーザーさんからは、つぎのような意見をよく聞きました。
「個別改造があれば、パターン改造なんていらないじゃん!」
おっしゃりたいことはわかります。それでも、やっぱり必要なんです。

ひとつ、例をあげましょう。『MM2R』に登場する戦車・マンムート。


『MM2R』のマンムート。ちなみにドイツ語で”マンモス”という意味。

「第1ヤマト砲の上に第2ヤマト砲をつける」というパターン改造があるのですが、これを穴の個別改造でやると、おかしなことが起こるのです。
なんと、第1ヤマト砲がないのに、第2ヤマト砲を取りつけることができてしまうんです!

じつは、穴パターン改造はシステム上、単に穴を改造するだけでなく、穴の改造パターンも変化しています。
個別改造ならそれぞれの穴のデータしか変化しませんが、パターン改造の場合はシャシー自体が変化して、それに付随するさまざまなデータも変わってしまうのです。
わかりやすい例を挙げれば、「パターン改造したあとに、ダブルエンジン化できるようになる」というようなことですね。
個別改造でも、こういうデータの変化を表現できるかもしれませんが、それはそれでさらに膨大なデータが必要になりそうなので、現時点では実行に移していません。

さて、ここでいよいよ『MM4』の話をしましょう。


『MM4』の強さ画面。項目がずいぶん増えたぜよ!

『MM4』では、穴の最大数がさらにひとつ増えて、6つとなりました。
穴はたったひとつしか増えていませんが、ここまで読んでくださった方なら、それがどれぐらいの作業量になるか、おわかりでしょう?


『MM2R』と『MM4』の穴パターン改造。ツリー型からリスト型になった。

そうそう、穴のパターン改造は、ツリー型からリスト選択方式に変わりました。
(このあたりのことは、新MM通信の第8回に書いてあります。)
これまでと比べると、非常にわかりやすくなったかと思います。
残念ながら、『MM4』でのシャシーの穴の改造に関する変化はこれだけです。
しかし、シャシー改造屋のインターフェイスを大幅に変えています。


シャシー改造屋で個別改造を行っている画面。
どの穴でどんな改造ができるか? スムーズにわかる。

シャシー改造後の見た目を、“強さ”画面と同じように確認できるようになりました。
個別改造もひとつずつではなく、『MM2R』のバトー博士の戦車設計図のように、すべての穴をいっぺんに改造できます。
そうそう、穴の改造ではありませんが、『MM4』からはシャシー改造屋でシャシーの“特性”も改造できるようになりました。
すべてのシャシー改造屋がバトー博士になった! てな感じです。
しかも、『MM2R』にように、鉄くずを集める必要はありません(笑)。

そんなわけで、『MM4』では、改造生活がいちだんと快適になりました。
ぜひ、実際にプレイして、その快適さを味わってみてください!

じゃあ、ここでまた、いつもの合い言葉をいってみましょう。

「メタルマックスは、絶対オモシロイ……ぜよ!!!」

■今回の土佐弁

いごっそう……快男児、酒豪、頑固で気骨のある男などを意味する
こじゃんと……すごくたくさん
~ぜよ……~だよ、~ですよ
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